授業でホモフォビックな発言を受けて、時には目の前の人を信じて期待してみることも良いかも、と思えた日記②

授業が始まると、教授から”serious issueがあった”と導入された後で、「でもまずは自分について少し話させて、」と教授の出身地のアラバマでの経験を彼が話してくれました。アラバマの人種差別の歴史とか状況について話した後に自分の白人中流階級男性としての特権性を語ってくれていました。それと関連させて、日本のジェンダーセクシュアリティに関する差別の現状についても結構時間をとって淡々と話してくれました。
自己開示をするところから話を始めてくれたのがとてもありがたかったです。
 
わーと喋って重苦しい空気に包まれたところで突然わた氏の名前が呼ばれる。(ちなみにハイブリット授業で教室にいる子もいればオンラインで参加している子もいて、私はオンラインで参加していました。)
 
”〇〇, 何があったか、それについてどう感じたか・何か伝えたいこととか話してくれる?断っても大丈夫だけど”
 
と振られて、omg泣いたら嫌なので何があったかは教授に話してもらえたらよかったかもしれないかもしれないかもと思いながら、”やあ, sure , totally”と私の口は私の頭の思考との連結を切断し話を始めました。
 
ことの経緯を話して、歴史的な話と、それがどうして間違っている言説なのかと話した上で、
もともと書いてあったリストの通り
 

①書いた人のことをattackするのではなく書かれたstatementについてだけ話したいということ。 It really doesn't matter to me WHO made that statement. 私にとって、「誰が」言ったかは本当にどうでも良いこと。
 
②その発言について自分がどう感じたか Honestly, I was very shocked and sad. I realized how vulnerable I was. 普段クィアであることも名前も顔も出しているけれど、For the first time I realized how difficult it is for me to do so for myself after seeing such comments this time. 
 
③あれは学術的な"a different opinion"でも"other way of thinking"でもなくただ差別発言だと思う。
 
④"i don't mean to offend it"(偏見はないけど/差別じゃないけど)"but〜" というのはああいう発言をしていいexcuse言い訳にはならないこと。this is not an excuse to make statement like that. 私たち誰もが偏見を持っていて、「私には偏見がない」と思った瞬間、私たちは自分を教育するのをやめて自己の差別性に気づかなくなること。
 
⑤If you think LGBTQ issues have nothing to do with you and you've never met anyone from the queer community, it's probably because they simply don't feel safe coming out to you. もし、あなたが自分はlgbtq issuesとは関係ない・クィアコミュニティからの人に会ったことないって思うのなら、それはおそらく彼等があなたにカムアウトするのは安全じゃないと思っているから。このクラスの中にも、どこでも、当事者はただただ存在してる。
 
⑦マイノリティがどのようにstruggleしてるかをマジョリティに教えたり差別と闘うのは私たちの義務でも責任でもない。それはマジョリティ側の仕事だと思う。

 

みたいなことを話したと思います。自分の視点から、「悲しかった」と発する時、若干言葉が詰まりました。が、割と冷静に話し切れてホッとしました。私は表情も話し方もどうあがいても割と穏やかなので、あえてストレートに話をしました。
 


すると、言い終えてすぐある女の子が

 

"sending u lots of love as a fellow queer person <3 You are doing SO SO much for the queer people in Japan so thank YOU. Lord knows we need a better community and more support here. I'm sure you've saved countless lives without even knowing <3 "
(同じクィアとして、たくさんの愛を <3 あなたは日本のクィアの人たちのためにとても多くのことをしてくれています。私たちにはより良いコミュニティとより多くのサポートが必要だとlordは知っています。あなたが気づいていないかもしれないけど、数え切れないほどの命を救ってくれていると確信しています <3)

と個別チャットに送ってくれました。それをみた瞬間、一気に緊張が解けて、ぽろぽろぽろぽろ涙が溢れて止まらなくなってしまいました(結局)彼女は後のディスカッションで "私もクィアなんだけどね"とみんなの前で名乗りでて話をしてもくれました。
 
 
1人も知ってる人がいないのにも関わらず、他にも複数の学生から "Thank you for being brave and vulnerable with us" とか "Hey, l'm also a member from queer community. You did a big thing. Thank YOU!!!" というメッセージを全体ではなく個別のチャットで貰って、その温かさにひたすら嬉しい気持ちでいっぱいでした。
 

 

すると、ここで想定していないことが起きました。

”Professor! I'm the one who made the comment. Can I apologize and also talk about why I made such remark?”
教授!その発言をしたのは私です。謝罪と、なぜそのような発言をしたのかについてお話してもよろしいでしょうか?

全体のチャットでその彼からこのメッセージが送られました。
私はそのコメントをくれた学生の名前を全く出さないで話し、かつ授業の前に彼のコメントを消してもらったから他の学生にもバレてないはずだったんだけど、にも関わらずなんと彼はわざわざ名乗り出て謝りたいから話す時間をくれって言って出てきてくれたのです。
 
彼は彼自身が実はバイセクシュアルで、「今の話を聞いていて、自分はたぶんホモフォビアを内面化してたと感じた。ヘテロじゃない自分はweiredoで、セクシュアリティについて適切な知識を得ようともしたことがなかった。だからこういう発言を軽率にしたんだと思う。傷つけて本当にごめんなさい。」という内容の話を、クラスの人の前でして、謝ってくれました。
 
私は彼がクラスの前で名乗り出ることも謝ることも、なくて良いと思っていたので本当にびっくりしていました。
 
これって本当に簡単にできることじゃない。特に(どのジェンダーであるかに関わらず)男性性を内面化している人にとっては。彼は本当に勇敢だと思う。私だったら、その場ですぐに声を上げる勇気がないかもしれない。私は彼の勇気を心から尊敬したと共に、間違っていたと気づいたら、すぐに非を認めて謝れる人で私もいたいなと思いました。
 
そして何よりも、時には目の前にいる人に期待をしてみることも良いなと知ることができました。それは、幸運にも恵まれたAllyの教授と、クラスメート達と、その彼のおかげです。
 
子どもの頃に理不尽に怒鳴ったり人種に基づく差別をする大人と対話を試みて、いくつかの「分かり合えない」という挫折をしたことがあります。社会の不条理を目にすることが増えるうちに、私は徐々に人への期待を失っていったのだと思います。
 
ずっと心のどこかで、「差別をする人と直接話し合っても、分かりあうことはできない」と思っている自分がいました。傷つくのがこわかったし、その自信が自分にはありませんでした。
 
あらためて整理したいけれど、自分が学問にしろ当事者支援にしろマクロのアプローチに興味を持っているのもこういうのが背景にあるのかも、と思います。
 
正直にいうと、今回この発言をした彼についても、わかりあうことが不可能だと私は勝手に思い込んでいました。私は言葉が拙いのでうまく伝わらず、見当違いなことを言われてさらに傷つくのなら、何も聞かないほうがましだと思っていました。
 
でもこういう結果になって、(私は彼をシスヘテロの白人男性だとも勝手に思っていたので、)当たり前だけれど、いかに自分のその直感が絶対的なものではないかに改めて気付かされたし、自分の偏見や排他性にも気付かされました。同時に、前よりもきっと多くの言葉と経験を得て、自分が思ってるよりもきっと少しは自分のなかにもうまく異なる相手と対話をするための土壌ができてきているのかも、とも思いました。自分が正直に思いを話したり声を上げた時に、側に立ってくれる仲間がいることも知りました。
 
ネットでは絶えず匿名の心ない言葉が飛び交うし、社会における構造的な差別も根強い。
 
これは1つのたまたま上手くいった成功体験の例にすぎないけれど、感覚が麻痺しそうになる社会で「もしかしたらこの人と分かり合えるかも知れない」という期待を今までよりも少しだけ広く持ってみたいなと思える、私にとって大きな出来事になった。
 
それで私は自分が終わった瞬間ホッッッとしてしまって(そういう所ある)
画面をオフにできていないのに気づかず一点を見つめて無心でバナナを食べてる姿を衆目に晒していたと知るのはまた5分後の話。
泣いてるところを見られたくないとか言っていたお前は一体 (おわり)